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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)830号 判決 1948年12月04日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人浦野光義の上告趣意第一點について

しかし窃盗罪は他人の支配に属する物件を不正領得の意思をもって自己の支配内に移すことによって既遂となるのであって犯人がその賍物を運搬中逮捕せられることなく警察官の警戒網を完全に離脱することによって始めて既遂となるのではない、本件は被告人が外一名と共謀して他人所有の温室に取り付けてあった硝子七十餘枚を窃取の意思をもって取り外し自宅に持ち歸る途中逮捕された案件である、從って被告人が右硝子を取り外し自己の支配内に移したときに窃盗の既遂となるのであるから原判決が本件をもって窃盗既遂罪に問擬したのは正當である、論旨は窃盗犯人が他人の占有物を自己の支配内に移した後においても警察官の警戒網を完全に離脱しなければ、右物件を完全に自己の占有に移したものでないから犯行の歸途賍物を運搬中準現行犯として逮捕されたときは窃盗の未遂であるとの獨自の見解に基づくのであって理由なきものである。

同第二點について

しかし銃砲等所持禁止令第一條、第二條は所定の除外事由なき以上銃砲等を所持すること自體を處罰するものである、従って被告人が本件軍刀を所持していた以上假りに所論の如く不法の目的等を有せず又危險性がないとしても本罪の成立を阻却するものではない、それ故論旨は理由がない。

よって本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四四六條により主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)

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